AIに市場を調べさせたら、AIが作った言葉で「競合なし」と返ってきた話

今回は、AI生成文の記号を一括で消すツール「Suppinize」について、 何を作るかを決めた段階の話を残しておきます。

前半が企画と競合調査、後半が組み上がってから公開までに変わった部分。

このツールのあたりから、相談する相手と実装する相手を分けるようになりました。 壁打ちと設計はClaude、実装はGemini(Antigravity)という分担です。 前に書いたLiteMDやNingenizeは企画の段階からGeminiと詰めていたので、そこが違うところ。

次に何を作るか

Androidアプリのほうが手続き待ちで止まっていて、時間が空いていました。 その間にWebで1本作れないか、という相談から始まっています。

候補として出てきたのはこのあたり。

  • 日本語トークンカウンタ(複数のLLM対応)
  • AI装飾クリーナー(絵文字見出しや過剰な太字を一括除去)
  • プロンプト管理ツール

それぞれ競合を調べてもらった結果がこう。

  • トークンカウンタ: 日本語特化の先行サイトが既にある。後発は不利
  • プロンプト管理: 市場が飽和している。「おすすめ13選」みたいな記事が出回っている。保存機能が要るのでブラウザ完結とも相性が悪い
  • AI装飾クリーナー: 英語圏には専用ツールが10本近く乱立している=需要がある証拠。日本語圏はほぼ空白

3番目が推されました。 「実需の証明があって、日本語圏は空いている」と言われれば、たしかに筋は通っている。

その言葉、誰が使ってるんですか

ただし、ひとつ引っかかりました。

「AI装飾クリーナー」という言い方は、説明のためにAIがその場で作ったものであって、 実際に困っている人はそんな言葉で検索していないのでは、という点。

聞いてみると、これが当たりでした。

「マークダウン プレーンテキスト 変換」あたりの、実際に打たれていそうな語彙で調べ直すと、 日本語の競合が普通に出てくる。Markdownクリーナーを名乗るもの、単純変換だけのもの、いくつか。 「日本語圏は空白」は、AIが自分で作った言葉で検索した結果そう見えていただけでした。

空白ではなかったが、勝ち目はあった

とはいえ、見つかった競合ページを実際に開いてもらうと、 基本的なMarkdown除去と文字数カウントくらいで止まっているものがほとんど。 絵文字見出しの除去、不可視文字の除去、消えた箇所の確認、項目ごとのオンオフ、 このあたりまで揃えたものは見当たりませんでした。

なので方針を引き直しました。 「誰もいない場所を取る」から、「簡素なツールの上位互換を出す」へ。

SEOのほうも一緒に変えています。 「マークダウン 変換」系のキーワードは既存ツールが在位しているので、正面からは取りにいかない。 狙うのは「ChatGPT アスタリスク 消す」みたいな、困っている人がそのまま打ちそうな言葉のほう。 ページに載せる文言も、AIが作った言葉ではなく、実際に使われている語(アスタリスク・記号・書式)に寄せました。

作るものを決める

v1に入れる機能はこうなりました。

  • Markdown記号の除去(**##---
  • 行頭の絵文字の除去
  • 不可視文字(ゼロ幅スペース等)の除去
  • 何がどう消えたかを見られる「変更箇所」タブ
  • 項目ごとのオンオフ

逆に、外したものもあります。 太字+コロンの箇条書きを平文に直す処理と、全角半角や句読点の正規化。 前者は誤爆しそうで、後者は好みが割れるところなので、v1では持たないことにしました。

名前は Suppinize(スッピナイズ)。 これも案を出してもらった中から選んだもので、すっぴん+-ize、先に出していたNingenizeと揃えた形です。


ここからリリース版:出す前に変わったところ

実装が上がきて、ビルドも受け入れテストも通ったあと。 公開できる状態かを見るレビューで、それなりに派手なやつが出ました。

テストが通っているから大丈夫、とはならないという例です。

Markdown記号を消すツールが、Markdown記号で壊れていた

* 項目A の形の箇条書きを入れると、出力の行頭に半端なスペースが残る。 ***(水平線)が混ざっていると、その後ろの太字を消したあとに * がひとつ残る。

原因は、斜体を消す正規表現が改行をまたいでいたことでした。 * で挟まれた部分を斜体とみなして消す処理が、 1行目の行頭の * と2行目の行頭の * をペアだと解釈して、間の文字ごと巻き込んでいた。

直し方は2点セット。 強調系の正規表現から改行を除外して、行をまたがないようにする。 そのうえで、箇条書きや水平線のような行単位のルールを、太字や斜体より先に処理する。

記号を消すツールが記号の解釈で転ぶのは、まあそうなるよなという感じではあります。

ほかに出たもの

  • <title> が二重に付いていた(静的HTMLとページ側の両方で出していた)
  • 存在しないOG画像を参照していた
  • FAQに「不要なスペースを除去します」と書いてあるのに、実装にその処理が無い

最後のは実害こそないものの、書いてあることとやっていることが違うので、文言のほうを直しました。

リリース後に足したもの

v1で外した機能は、リリース後にまとめて入れています。

  • 番号付きリストのプレーン化
  • テーブルのプレーン化
  • 日本語向けの正規化(全角半角・句読点)

どれも人によっては消されたくない部分なので、既定はオフ。 必要な人だけ自分で入れる形にしました。

まとめ

企画の段階でいちばん効いたのは、AIが出してきた結論そのものではなく、 その結論が乗っている言葉のほうを疑ってみたことでした。

「AI装飾」で検索して競合が見つからないのは当たり前で、 その言葉を使っていたのがAIだけだったからです。

調査を投げると、それらしい根拠と一緒にきれいな結論が返ってきます。 ただ、その根拠がどんな言葉で調べた結果なのかまでは、こちらから聞かないと出てこない。 結論の当たり外れより、そこを見たほうがいいなというのが、この一件で残った教訓です。

ツール自体は小さなもので、やっているのは記号を消すことだけ。 ただ、結果だけ出されると本当に大丈夫なのか分からないので、 何がどう消えたのかを消去線付きで確認できるタブを付けてあります。 文章をまるごと預けてもらうツールなので、そこは見えたほうがいいだろうと。

Suppinize は https://suppinize.uekibachidan.com/ で公開しています(2026年7月リリース)。