企画から公開まで1日で終わった話

今回は、文字起こしのテキストからフィラー(えー、あの、えっと)やタイムスタンプを消す 「Seishonize」というツールの話です。

前に書いたNingenize、Suppinizeと合わせて三姉妹にあたるもので、 企画を出してから公開までが、その日のうちに終わりました。

途中で一度、きれいに固まりましたが。

空いていた枠

Ningenizeが「AIっぽい言い回しの検出」、Suppinizeが「AI出力の記号を消す」。 どちらもLLMが吐いたテキストの後処理です。

だとすると、音声認識が吐いたテキストの後処理という枠が空いている。 Whisperなどで文字起こしをすると、「えー」「あのー」がそのまま文字になって残るので、 それを消して読める形にするツール、という位置づけです。

競合を調べてもらったところ、テキストを直接貼り付けて、 無料で、ブラウザの中だけで処理して、しかも消した箇所を確認できる、 という組み合わせは見当たりませんでした。

フィラー除去の機能を持つものはあるのですが、音声ファイルを投げる有料サービス側に寄っています。 文字起こしのテキストを既に手元に持っている人向けのものが、意外と無い。

前回の教訓が一度効いた

Suppinizeを作ったときに、AIが自分で作った言葉で検索して「競合なし」と結論していた、という一件がありました。 今回は最初にそこを確認しています。

調べてもらう中で知ったのですが、この作業には「ケバ取り」という言葉があるそうです。 テープ起こしの業界用語で、まさにこの作業を指す正確な言葉とのこと。 ただし、一般の人はその言葉では検索していないらしく、 実際に使われているのは「文字起こし 整形」「読みやすく」あたりだそうです。

なので「ケバ取り」はページの主語にせず、業界の人向けの解説コラムの題材に回しました。 狙う言葉は一般語彙のほう。同じ轍は踏まずに済んだ形です。

なぜ1日で終わったのか

企画、競合調査、命名、辞書作り、実装、デプロイまでが1日で終わりました。 理由ははっきりしていて、ほとんど作っていないからです。

  • 画面はSuppinizeのUIをそのまま流用
  • 「辞書を作って、正規表現で拾って、消した箇所をdiffで見せて、項目ごとにオンオフ」という構造もそのまま
  • 技術構成(ブラウザ完結・Cloudflare・サブドメイン)は既定路線で、毎回考え直していない

新しく作ったのは、フィラーと相槌の辞書31語ぶんと、文字起こし特有の処理(タイムスタンプや話者ラベルの除去)くらい。

同じ形のものを3本目ともなると、決めることがほとんど残っていません。 毎回ゼロから考えていたら、こうはならなかったはずです。

出す前に固まった

公開前の確認で、手元にあった44,576字の文字起こしを貼り付けてみました。

固まりました。

短い文章で試している間は快適だったのですが、 実際の会議1本ぶんの長さを入れた途端、画面が反応しなくなる。 文字起こしを整形するツールが、文字起こしの長さで死ぬというのは、さすがにまずい。

原因を見てもらったら、3つ重なっていました。

  • フィラーを1つ消すたびに、全文の正規化処理を最初からやり直していた
  • 1箇所消すたびに文字列を作り直していて、消す箇所が数百あると積み上がる
  • 画面の状態が変わるたびに、全文の処理が丸ごと走り直していた(コピーボタンを押しただけでも)

要するに、短い入力では見えない類のものが3つとも入っていた形です。

直し方は、消す処理をまとめて一括でやるように書き換えて、 処理自体は別スレッド(Web Worker)に逃がして画面が固まらないようにする、というもの。 5万字を入れても1秒以内で結果が出て、処理中も入力やタブ切り替えが効くことを条件にしました。

まとめ

3本目ともなると、決めることが減って、その日のうちに出せてしまう。 これは資産が効いているということなので、悪い話ではないはずです。

ただ、作るのが速くなっても、確かめる工程まで速くはなりません。 短い文章で動かしている間は快適だったものが、実際に扱うサイズでは止まっていました。 文字起こしのツールなんだから、長いものが来るに決まっています。

そのツールが実際に扱うサイズを、出す前に一度入れてみる。 組み上がるのが速くなったぶん、ここを削らないようにしたいところです。

Seishonize は https://seishonize.uekibachidan.com/ で公開しています(2026年7月リリース)。